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段階的分割について
~Question~
亡くなった父には、かなりの遺産があり。そのため、調査にも時間がかかりそうです。また、一部の不動産については他から所有権を争う訴訟を起こされています。相続人からは、「預金だけでも早く分けてほしい」と言われているのですが、預金だけ分割することってできるのでしょうか?
~Answer~
●段階的分割
通常、遺産分割は遺産全てについて分割するのですが、現実には一度に全部を分割することは困難な場合があり、このような場合には、遺産のうち分けやすいものから分割するという段階的な分割方法をとった方が良い場合があります。
ご質問の場合も、一度に遺産全部を分割することは困難で、まずは預金だけを分けて、残りの遺産を分割する際に相続人に公平となるよう調整するのが適切と思われます。
このような段階的に分割する方法については、通説判例によって認められており、分割協議だけではなく調停や審判の実務でも行われています。なお、すでに行われた協議を無効にして分割し直すことは、相続人に無駄な努力を強いることになり、原則としてはすでになされた遺産分割協議書は有効と考えられます。
●どのような場合にゆるされるの?
どのような場合に段階的分割が許されるかについては、規定がありません。遺産調査に時間を要する場合・遺産の一部に訴訟が係属して確定までに長期間かかる場合・遺産の一部の分割が禁止されている場合・相続税の支払いのため現金を早く取得したい相続人がいる場合など一部分割すべき合理的理由があり、遺産分割の基準に照らして遺産全体の総合的配分に食い違いが生じないで、残余財産の分配によって相続人の公平をはかることができる場合に許されるとしています。したがって、安易に一部分割が許されるわけではありません。
●残余財産に及ぼす影響について
一部分割が残余財産に及ぼす影響については、すでに分割した遺産についても分割時にあるものとして遺産全体の総額を評価し、具体的に相続分を算定し、そこから一部分割によって各自が取得した遺産評価額を控除したものを残余財産の分割による取得額として、一部分割の際の不公平不均衡を是正するのが相当であると思われます。しかし、一部分割の不均衡を考慮せずに残余財産を独立に分割することも認められる場合があります。
したがって、このような暫定的分割をするときは、分割の協議書や調停調書に一部分割であること、その一部分割が残余財産分割の際に及ぼす影響の有無、内容について明確にしておく必要があります。