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遺言書を偽造した者でも相続はできるのでしょうか

~Question~

先日私の父(X)が亡くなり、遺品を整理していると、遺言書が見つかり、その内容は私(A)の弟(B)に極めて有利なものでした。ところが、弟は昔から父に迷惑ばかりかけていたので、父が弟に有利な遺言を残すとは考えにくかったので、筆跡を調べてみたところ、弟が改ざんしていることが判明しました。この場合でも、弟に父の遺産を相続する権利があるのでしょうか。

~Answer~

●相続欠格とは

結論からいえば、上記のQの場合、Bはいわゆる「相続欠格者」ということになり、父Xの遺産を相続する権利がありません。

また、仮に改ざんされた遺言書の他に、財産をBに遺贈するという内容のXの遺言書が別に存在していたとしても、受遺者となることはできません。

相続欠格とは、法律に定められた一定の事由がある場合に、被相続人の意思の如何を問わず、当然に相続権を剥奪する制度のことをいいます。これは、相続制度が家族共同生活に基づいて認められるものである以上、その秩序を壊してしまうような行為をした者にまで相続を認める必要はないと民法により考えられたことによります。

 

●相続欠格事由

相続欠格事由となる相続人の行為は、以下のようなものがあります。

 

①故意に被相続人または相続について自分より先順位もしくは同順位にある者を死に至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた場合

 

②被相続人が殺害されたことを知っていながら告訴・告発をしなかった場合

 

③詐欺や強迫の手段を使って、被相続人が相続に関する遺言をすること、または遺言の取消し・変更をすることを妨げた場合

 

④詐欺や強迫の手段を使って、被相続人が相続に関する遺言をさせ、あるいは遺言の取消し・変更をさせた場合

 

⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、あるいは破棄・隠匿した場合

 

なお、①について、過失により死なせてしまった場合や、傷害を負わせる意思で死なせてしまった場合、及び有罪判決を受けなかった場合、また、有罪判決を受けても執行猶予判決で執行猶予が取り消されずに無事に期間が経過した場合は、相続欠格事由にあたらないと考えられています。また、②についても、殺害者が自分の配偶者や直系血族である場合、告訴・告発をしなくても相続欠格事由には該当しないと考えられています。さらに、③④⑤についても遺言書が相続に関するものでないときには、相続欠格事由に該当しないと考えられています。

 

●相続欠格事由の効果

ご質問の場合、Bの行った行為は上記の相続欠格事由のうちの⑤にあたると考えられるので、Bの相続権は剥奪されることになります。

もっとも、Bの相続権が否定されたからといって、必ずしもAの相続分が増えるとは限りません。相続欠格は代襲原因なので、Bに子供がいれば代襲相続が認められることになり、その場合はAの相続分は増加しないことになります。

相続欠格の効果は、上記の相続欠格事由があれば当然に生じることになります。

したがって、遺産分割協議をする際に、ただ主張すればよいはずですが、欠格事由の有無をめぐり、争いになることも考えられます。よって、あらかじめ裁判所で欠格事由の存否を確認しておいた方がいいでしょう。

 

●相続欠格の相対効果

また、相続欠格は、その対象となった被相続人に対する関係についてだけ相続権を奪うにすぎないので、今後Aの母について相続が問題となった場合、Bにはその相続権はあります。つまり、欠格の効果は相対的に生じる(今回は、父の相続についてのみ)ことになります。

 

●相続欠格と遺贈

相続欠格者は、被相続人から遺贈も受けることができないとされています。

よって、ご質問の場合、Bに財産を遺贈する旨の遺言書が新たに見つかったとしても、相続欠格者であるBは財産を取得することができないということです。

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