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分割禁止の「特別事由」について
~Question~
遺産分割を禁止する「特別の事由があるとき」とはどのような場合でしょうか。また、遺産の一部だけを分割禁止にすることは可能ですか?
~Answer~
遺産分割の禁止は、遺言による場合、協議による場合、審判による場合、調停による場合に行なわれます。民法では遺産分割において「特別の事由」がある場合は、家庭裁判所は期間を定めて遺産の一部または全部について分割を禁止することができると定めており、家庭裁判所の審判で遺産分割を禁止する場合は、この「特別の事由」が必要になります。遺言や分割協議、調停で遺産分割を禁止する場合は「特別の事由」は必要ありません。
●前提問題に争いがある場合
家庭裁判所の審判で「特別事由」が認められる場合として多いのは、相続財産の範囲や相続人の範囲が定まらないなど遺産分割の前提問題について争いがあって、分割に障害がある場合です。たとえば、ある財産が被相続人の遺産に含まれるかどうか争われた場合、相続人の一人に被相続人との間の親子関係不存在確認訴訟が提起されたり、死後認知の訴訟が提起されるなど相続人の範囲が争われている場合などです。
このような遺産分割の前提問題に争いがあるときは、最終的には民事訴訟でその点が判断されることになりますが、その訴訟が確定するまでは遺産分割手続きの進行をストップしておくのが適切で、またその解決に長時間を要するときは、必要に応じてその間遺産分割を禁止する審判をすることになります。
●その他の場合
遺産分割に障害があるその他の場合としては、遺産の大部分を占める不動産に第三者との間で境界争いなど民事訴訟が係属中で、これを解決しないまま分割するのが適切でない場合や、営業用の資産の散逸を防止する必要がある場合などがあります。
また、株式の換価分割を行う時に株式相場が低迷しているなど直ちに分割すると遺産の経済的価値に著しい損失が生じる場合など即時の分割が相続人の利益に反する場合も「特別事由」が認められることがあります。
しかし、これらの場合、分割を禁止しても単に問題を先送りするだけに過ぎない結果となることも多く、安易に分割禁止に頼ることは避けなければなりません。代償分割など現在行う分割の方法自体をいろいろ工夫することによって、問題を早期に解決する努力を怠ってはいけません。
●一部の分割の禁止
遺産分割を禁止すべき特別の事由は、遺産全体についてよりも、特別の遺産について生じる場合が多いと思われます。例えば、相続財産になるかどうか争いがある財産は残して、他の主な財産について一部分割を行い、争いのある財産については分割を禁止することや、相続人の地位に争いがあるときに預貯金はいちおう現在の身分関係にしたがって分割し、不動産は前提問題が解決するまで分割を禁じることなどが考えられます。