相続・遺言トータルサポート大阪TOP > 相続ブログ > 遺産分割を禁止することってできるの?
相続ブログ
遺産分割を禁止することってできるの?
~Question~
父は長年クリーニング店を個人で経営してきましたが、先日事故で亡くなりました。遺産は店舗兼住居の不動産のみで、相続人は私たち兄弟3人です。相続人間で話し合いをしましたが意見が合わず、遺産の不動産を分割してしまうと店の営業は継続できない状態になってしまいます。父が築き上げてきた店を守りたいのですが、何かよい方法はないでしょうか?
~Answer~
お店の営業を継続するためには、他の兄弟が父の死亡後3ヵ月以内に相続放棄をして兄弟の1人が単独で相続するとか、兄弟の1人が遺産を取得し他の兄弟に対して代償金を支払うなどの遺産分割協議をする方法があります。
しかし、円満な話合いができない場合は、とりあえず遺産の分割をしばらく見合わせるというのも一つの方法です。これを『遺産分割の禁止』といいます。
遺産分割の禁止は以下の4つの場合に行われます。
1. 遺言による場合
被相続人は、遺言で相続開始時から5年を超えない期間内で遺産の分割を禁止することができるものとされています。禁止の期間を5年以内としたのは、長期にわたって不安定な状態が継続することを避けようとする趣旨です。
2. 協議による場合
共同相続人間で遺産の分割を禁止する旨を協議することもできます。相続人や遺産の範囲が確定しない場合や、遺産の状況や種類からただちに分割することを控えた方がよい場合には、共同相続人の協議によって分割が禁止されることになります。この場合の禁止期間についても5年を超えることはできませんが、共同相続人が合意すれば5年を超えない限度で更新も可能です。
3. 調停による場合
共同相続人の間で協議が調わない場合には、遺産分割の禁止を求める調停の申立ても認められます。
4. 審判による場合
共同相続人間の協議が調わない場合は、家庭裁判所は審判の申立てを受けて5年以内の期間を定め、遺産の全部または一部について分割禁止の審判をすることができます。この場合には、相続人や遺産の範囲が確定していないことや、遺産の状況や相続人の状態からただちに遺産を分割することが妥当でないという『特別の事由』が必要とされます。
今回のご質問の場合にも、営業用の資産の散逸を防止する必要があり、共同相続人間で当分の間遺産分割を禁止する協議をし、この協議が成立しなかった場合は、家庭裁判所に調停や審判を申立てることができます。
なお、遺産分割の禁止の審判後に事情の変更があった場合には、相続人はその審判の取消しまたは、変更を求める申立てをすることができます。
また、遺産分割の禁止を第三者に主張するには、不動産の場合にはその旨を登記しておくことが必要となります。