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身元保証人としての地位も、相続の対象となるの?

~Question~

私の夫(X)は、義姉から依頼され、5年ほど前に義姉の娘Aが就職する際の身元保証人となりました。夫は半年ほど前に、病気で亡くなりましたが、その頃にAは会社のお金を使い込み、同僚の男性と姿をくらませてしまいました。最近になってAの勤めていた会社から私に対して、「あなたは亡くなったご主人から身元保証人の地位を相続したので、Aが会社に与えた損害を賠償してほしい」と言われてしまいました。

私(Y)は本当に損害賠償をしなければならないのでしょうか。

 

~Answer~

 

●身元保証義務とは

身元保証契約とは、身元保証人が使用者に対し、身元本人(=被用者)が使用者に損害を与えた場合、その損害を賠償することを約束しておく契約のことをいいます。

この場合において、身元保証人が負担することになる債務の内容は、具体的には身元保証人と使用者との間で取り決めます。その取り決めは、大きく分けると次の2つに大別されます。

 

 身元本人が故意または過失により、使用者に損害を与えたときに限り、身元保証人が債務を負うとする場

  合

 

 不可抗力を含めて身元本人が使用者に損害を与えたすべてのケースにおいて、身元保証人が債務を負うと

  する場合

 

一般的にはの約定をすることが多いようです。

 

●身元保証人の責任の軽減

もっとも、①②どちらの場合にしても、身元保証契約を結んだ時点では一般の保証契約とはちがって、将来いくらの額の債務を保証人が負担することになるか分からず、また、一度具体的に保証債務の支払いをしたとしても、身元保証契約が存続する限り、身元保証人が使用者に損害を与えれば、何度でも債務を負担することになります。その上身元保証契約では、保証期間を「身元本人が在職する限り」と定めることが多いので、身元保証人としてはいつまで債務を負担させられる可能性があるのかわかりません。さらに、身元保証人はたいていの場合、単なる好意により、無償でこのような大きな責任を引き受けてしまっている場合が多いです。

このように、身元保証契約で定められたとおりの債務を身元保証人に負担させることにより、身元保証人を非常に不安定な地位におき、時として非常に酷な結果を招いてしまうことがあります。

そこで、「身元保証ニ関スル法律」が制定され、身元保証債務の内容を制限し、身元保証人が過大な債務を負担することのないように配慮されています。

 

●基本的身元保証債務の相続性

身元保証契約自体が、身元保証人と身元本人の間の格別な信頼関係に基づいているものと考えられることや、責任が広範囲に及ぶということを考慮すると、身元保証契約に基づく身元保証債務は、身元保証人の一身専属的なものと考えられます。

相続人と身元本人の間には、生前の信頼関係があるとは限りません。よって、この地位は相続の対象とはなりません。

したがって、今回のご質問の場合でも、Aに対する身元保証契約に基づく抽象的な身元保証契約はXが死亡したことによりすでに消滅していますので、Yはこれを承継することはないと考えられます。

 

●個別的身元保証債務の相続性

ただし、身元保証人が生きている間に、身元本人が使用者に損害を与えてしまい、身元保証人が「すでに具体的に発生した損害賠償債務を負担していた場合」には、これは具体的な金銭債務なので、当然相続の対象となります。

要するに、今回のご質問の場合でも。Aのお金の使い込みがXの死亡した後の話であれば、元となる身元保証債務は消滅しているので、Yは会社に対して何ら損害賠償をする必要はないですが、Aのお金の使い込みがXの死亡する前であれば、Xは身元保証契約に基づく具体的な損害賠償債務を負担しており、Yはこれを相続するので、基本的には会社に対して支払いをする義務を有します。

もっとも、先述の「身元保証ニ関スル法律」との関連により、実際の支払額はAの使い込んだ額より減額されることも考えられます。さらに、その額が巨額で、とてもじゃないけど支払いきれない場合、会社がAの使い込みの事実をYに、わざと遅らせて通知していたという事情があるとしたら、Xが死亡してからすでに3ヶ月以上経過しているけれども、場合によっては、相続放棄や限定承認の申述が認められる可能性もあり、免除される場合も考えられます。

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