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遺産を生前に不正使用していたら?
~Question~
亡くなった父は、亡くなる前の数年間は寝たきりの状態で、長男が預貯金や印鑑も全て保管しておりました。長男は父が亡くなる前に、父の預貯金を
勝手に払い戻して使っていましたが、遺産分割調停ではこれをどのように主張すれば良いでしょうか?
~Answer~
遺産分割調停において、被相続人の預貯金を生前に相続人の一人が不正に使用していたとの主張は、よくでる主張です。
元来、遺産分割は、被相続人が死亡時に有していた遺産をどのように分けるかとの問題ですので、このような生前の不正使用は、本来遺産分割の固有の問題とは別個の問題であるということを認識すべきものです。
調停委員がこのような問題に関与する時は、まず長男に対して、預貯金の写しの提出が求められます。そのうえで、各払い戻しについて、その使途を明記し、かつ領収書があるものは全部領収書の提出を求められます。
このような事実関係を踏まえて、申立人はこれを検討します。
●被相続人の療養、看護に使われている時
被相続人の預貯金が払い戻され、これが被相続人の療養・看護に使われている場合は、特に問題のない支出と考えられますので、この点は特に問題とならないと考えられます。
●特別受益と考えられる時
被相続人の預貯金の払い戻しが、被相続人の了解のもとにまとまったお金が長男の生計の資本等に使われているのであれば、長男としてはそのお金について、特別受益として生前贈与と主張することが考えられます。
したがって、このような主張が正当なものであれば、遺産分割調停の中で解決すべき問題であると考えられます。
●不法行為、不当利得として考えられる時
被相続人の預貯金を、被相続人の了解なくして長男が勝手にこれを払い戻し、自己の用途に使っている場合は、不法行為としての損害賠償請求や、不当利得としての返還請求の問題となります。
しかもこのような損害賠償請求権ないし返還請求権は、金銭債権として、法定相続分に応じて相続されると考えられます。
このような不法行為ないし不当利得については、これが遺産分割において大きな問題となるのであれば、本来の遺産分割とは別個の問題として切り離して、地方裁判所における損害賠償請求訴訟等として解決すべき問題であると考えられます。
●使途不明の時
被相続人の預貯金が払い戻しされているが、その使途が不明な場合や、その払い戻しが被相続人の意思に基づいているのか否か不明の場合は、遺産分割調停ではこれを考慮することが出来ませんので、現在ある預貯金を前提として、遺産分割調停を進めざるを得ないと考えられます。