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生命保険金は特別受益にあたるの?
~Question~
父と母は、昨年2人とも90歳近くで、相次いで亡くなりました。その遺産は父母合わせて合計約6000万円です。相続人は兄弟が4人で、私が末っ子だったため、最後まで父母と同居し介護しました。他の兄弟はいずれも結婚して家を出ています。
父母には遺言書がなかったため、遺産の6000万円を法定相続分にしたがって、1/4ずつ分けることでほぼ話がついております。しかし、長男から母が私を受取人としてかけていた生命保険金の500万円は特別受益に該当するので、持ち戻し計算をして、その分を差し引くべきだと言ってきました。
私は、母がせっかく私のためにかけてくれた生命保険金なので、特別受益をいわれることに納得いきません。
生命保険金は遺産分割においてどのように取り扱われているのでしょうか。
~Answer~
●生命保険金と遺産分割
被相続人が保険会社や郵便局との間で保険契約を結び、被保険者を被相続人とし、保険金の受取人を共同相続人のうちの一人と指定することがあります。この場合、後日相続人がなくなった場合、受取人はその相続人固有の権利として保険金請求権を有し、この生命保険金は被相続人の遺産ではなく受取人固有の財産であると考えられます。
この点、相続税の申告の際『生命保険の明細書』として非課税部分と課税部分を記載することがありますが、観点が違いますので注意する必要があります。
●生命保険と特別受益
生命保険金は、被相続人が保険料を支払い、その死亡によって受取人に保険金が支払われることから、贈与ないし遺贈に準じて特別受益に該当するとの学説が有力にありました。
そして、家庭裁判所の審判例においても特別受益性を認めるものとこれを否定する例がありました。
しかし、最高裁判所の平成16年10月29日決定は次のとおり判示して、生命保険金は原則的には特別受益に該当しないと判断されました。
つまり、一口に生命保険金といっても、その額や遺産に占める割合、被相続人への介護状況などを総合的に考慮し、それが特別受益に準じて取り扱う場合もあることを示唆しています。
●ご質問のケースの場合
今回のご質問の場合には、遺産総額が6000万円でありこれを法定相続分にしたがって分割する方向で話が進んでいるようですし、あなた自身が年老いた父母と同居し最後まで介護しており、お母様があなたを生命保険金500万円の受取人としたのもあなたの貢献を認めこれに感謝する意思もあり、しかも生命保険金が500万円と遺産全体の1割弱であるところから、ご質問のケースの生命保険金は、あなたに確定的にこれを取得させることがお母様の意思とも考えられ、一般的には特別受益に該当しないと考えられるでしょう。