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亡き父の愛人が営んでいるお店の明け渡しについて
~Question~
先日、父が亡くなり相続人は息子の私一人です。父は生前、多くの女性とお付き合いをしておりました。その中の1人に駅の近くでお店を経営させている女性がおり、そのスナックの土地と建物は父名義と考えられます。私からその女性に明け渡をもとめたところ、この土地と建物は父の生前に贈与を受けたものであり自分のものと主張して、明け渡しを拒んでいます。私はその女性に明け渡しを求められるのでしょうか?
~Answer~
●お店の土地建物の名義の確認
まず、お店の土地・建物の登記事項証明書もしくは不動産全部事項証明書を申請して、所有名義を確認することが必要です。お店の土地・建物の所有名義がお父さんのままなのか?それともその女性に移っているのかで、あなたからの女性に対しての明け渡し請求ができるかの可能性が大きく変わります。
●土地・建物の所有権登記名義人はだれか?
1. お店の土地建物の所有権登記名義人が女性に移転していた場合
土地・建物の所有名義がお父さんからその女性に移転していた場合は、すでにお父さんの生前にこの土地建物が愛人に贈与されていたと考えられますので、基本的には明け渡しの請求は出来ないと考えた方が良いでしょう。
ただ、お父さんが亡くなる直前に、意識のない状態の時点で所有権の移転登記がなされた場合など、お父さんの意思に基づかない登記であるとの疑いが少なからず考えられる場合には、当該土地建物の登記をお父さんに戻してから、土地と建物から立ち退いてほしいという内容の請求が場合によっては可能となるものと考えます。
しかし、その場合でも、女性がお父さんから何らかの使用権限(使用貸借・賃貸借等)を与えらえている場合があります。この場合には、あなたは女性に使用権限を与えたお父さんの相続人でありその地位を承継するので、女性との間の賃貸関係引き継いでることになります。例えば賃貸借であれば明け渡しの請求には正当事由の問題等があり、使用貸借であっても、お店がその女性の唯一の収入源である等の事情がある場合には、明け渡しを求めるのはかなり困難を要する場合も考えられます。
2. スナックの土地建物が所有名義がお父さんある場合
女性の主張によれば当該土地建物はお父さんの生前に贈与を受け、登記名義はお父さんであっても、すでに土地建物はその女性所有でるという事になり、明け渡しの請求は出来ないようにも思えます。
a. 女性の当該贈与の主張が父さんとの単なる口約束にすぎなかった場合
口約束であっても贈与は有効に成立します。
ただ、この場合は女性の主張を裏付ける物的な証拠がありませんので、あなたとしてはお父さんの相続人として、女性に当該土地建物の明け渡しを請求していくことが一応可能ではないかと思われます。
しかし、示談がまとまらずに訴訟となった場合の主張や立証の状況如何によっては、お父さんとその女性との間の本件土地建物の贈与の約束が認められ、あなたの請求が退けられる可能性もあります。
また。このように書面によらない贈与は、民法上履行が終わらない部分については、当事者双方から取り消すこと出来るとされておりますので、お父さんの地位を承継したあなたから取消の意思表示をすることも可能です。
しかし、お店はお父さんの亡くなる前から、すでに女性が占有していることから、履行が終わっていると認定され取消は出来なくなる場合もありえます。
b. お父さんから贈与の意思を表す文書や贈与契約書が作成されていた場合
贈与意思を表示する文書や贈与契約書にお父さんの自書による署名がなされ、実印が押印されているような場合には、お父さんの女性に対する土地建物の贈与の意思を表す物的な証拠があることから、基本的には明け渡し請求は難しいのではないかと思われます。
この場合には逆に女性側からお父さんの相続人であるあなたに、本件土地建物の所有権移転登記を請求してくるとも考えられます。