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遺産分割調停の最近の傾向について
~Question~
家庭裁判所での遺産分割の調停の進め方の最近の傾向を教えてください。
~Answer~
各家庭裁判所や審判官においては遺産分割を迅速に効率よく行うために、様々な工夫がされています。
遺産分割手続とは、誰に対して、どのような財産をどのように分けるのかを定める手続きです。
遺産分割調停を迅速かつ効率的に行う様々な工夫をすることによって、かつて遺産分割調停は長期化しかつ泥沼化するといわれた批判を排して、遺産分割調停を1年ないし6回から10回くらいの期日によって解決を目指そうとしているものと考えられます。
●前提問題の早期処理
遺産分割に際し、相続人の範囲や遺産の範囲、さらには遺言書の有効性等のいわゆる前提問題に争いがあることが多くあります。このよような場合において、前提問題は往々にして訴訟事項となることが多くありますので、前提問題について厳しい対立があるのであれば、それは調停で解決するよりも訴訟事項として早期に調停を打ち切り訴訟にした方がよい場合があります。したがって、そのような場合には、前提問題は早期に処理すべきことが要請されると考えられます。
●付随的紛争の早期処理
遺産分割の固有問題ではない付随的紛争として、例えば、遺産を生前に相続人が費消したであるとか、遺産について被相続人の死亡後の収益をどうするか等について紛争が存することが多くあります。このような付随的紛争については、当事者の気持ちとしては、もちろん遺産分割調停と一緒に解決すれば紛争の一回的解決に資するわけですので、本来好ましいものであるかもしれません。
しかし、このような付随的紛争によって、かえって本来の目的である遺産分割調停が長期化、泥沼化し問題が複雑化することが多く見受けられますので、付随的紛争については調停において早期にこれを処理し、もしも付随的紛争について深刻な争いがあるのであれば、それは遺産分割調停以外の別途の訴訟等において解決してもらうべきと考えられます。
●特別受益、寄与分の主張について
特別受益や寄与分については、往々にして感情的な問題が根底に存していることが多く見受けられます。
したがって、当事者が主張する特別受益や寄与分については、早期にそれが法律上成立しうるか否かついて見極める必要があります。この点については調停委員も早期に審判官と評議し、これを見極める必要があります。その際必要であれば家事調査官の立会いもなされる場合があります。
●期日の進行について
1. 第1回期日
第1回期日の前において、すでに審判官は遺産分割調停についての方針を定め、この点について調停委員と事前評議をし、遺産分割調停についての方針を打ち合わせることが多く行われています。
2. 第1回期日ないし第3回期日くらいまで
この初期の調停期日の段階においては、申立人及び相手方から本件遺産分割調停の問題点を把握し、双方において具体的分割案の提示を求めれらることが多くあります。そして、この具体的分割案を基とし、また本件の具体的問題点を検討する意味から調停委員と審判官が評議し、その後の進行を打ち合わせることになります。
なお、この場合においても、必要である場合においては家事調査官が立会い、また場合によっては不動産鑑定士や公認会計士などのいわゆる専門委員調停委員を活用する場合も見受けられます。
また、家庭裁判所によっては、この段階において遺産の範囲と評価について当事者が合意しているときは、これを中間合意書としておく取扱いもあります。
3. 中間評議
遺産分轄調停の論点が見定まり、これについてその後の方針を打ち合わせるため、調停委員と審判官において中間評議を行うことが多くあります。
4. 早期解決
遺産分割調停の申立てから1年以内または回数で5、6回から10回くらいまでの期日の間において、遺産分割における論点を把握し、それについての申立人及び相手方の具体案の提示を求め、それによって調停が成立するのであれば最後の詰めの段階として調停条項案の作成を検討します。また、調停の成立の見込みがなければ審判を前提として評議をせざるを得ないという段階になります。