相続・遺言トータルサポート大阪TOP > 相続ブログ > 土地建物の売買契約の途中で買主が死亡した場合
相続ブログ
土地建物の売買契約の途中で買主が死亡した場合
~Question~
私は昨年引退して、自宅を売却し田舎に引っ越すことになりました。そこで不動産屋に依頼し売却先を探していたところ、買主が見つかりその人との間で売買契約を締結して、手付金を受け取りました。その後買主が交通事故で亡くなってしまったのです。
1この場合の売買契約の効力はどうなるのでしょうか?
2支払期限に代金を支払ってもらえなかった場合にどうすれば売買契約を締結できるのでしょうか?
3買主の相続人が買主の妻と子2人であった場合において、長男が父親を受け継いで買主になると主張している場合はこの長男が自動的に買主になるのでしょうか?
また、私は、買主の二男と妻には何も言えないのでしょうか?
~Answer~
●売買契約の効力はどうなるのか?
あなたと買主の間では、すでに自宅の土地、建物についての売買契約書を取り交わし、手付金を受け取っているのですから、あなたの自宅の土地・建物の売買契約は有効に成立しているものと考えられます。そうなると買主の相続人が、買主としての権利義務を承継することになります。
●売買契約の解除はどのようにして行うのか?
売買契約書上の明記された約定の残代金支払い期日を経過したという前提で回答します。この場合には契約違反を理由に売買契約を解除することが考えられます。方法としては、契約書に特に定めがなければ、期間を定めて相続人全員に支払いを催告し、さらに契約の解除通知も行われなければならないものと考えられます。この場合、注意すべきは、誰が相続人であるかは外観からはっきりしない場合が多く、相続人の申告のみを信用することなく、専門家である弁護士や司法書士に依頼して調査してからの対処をお薦めします。
●買主としての地位は、相続人の協議のみで勝手に相続人の一人が承継できると定められるのか?
1.買主としての地位とは(買主の権利義務)
遺産は、相続が開始したときは、相続人全員の共有になります。したがって、不動産の売買契約に基づく買主としての地位すなわち、権利や義務も相続人に共同して承継されます。買主としての権利とは、買った土地・建物の移転請求権や引渡請求権、契約の解除権などです。買主の義務としては、残代金の支払い債務です。
2.長男のみが土地・建物の所有権を取得することは可能か?
さて、このうち権利については遺産分割の対象となりますので、各相続人の間で協議をして、長男のみが当該土地・建物の所有権を取得するおと、すなわち、登記はを移転してもらい引き渡しをうけることは可能です。
3.長男のみが代金支払債務を負うと定めることは可能か?
代金支払債務が可分債務であることを前提とすれば、相続によって各相続人に相続分に応じて分割された分が承継されることになりますし、代金支払債務が不可分債務であれば、各相続人はあなたに対して、売買契約に基づく代金支払債務を負うことになります。とすると、買主の長男が当然には「自分だけが代金を支払います」と主張することは出来ません。つまり、相続人の協議のみで長男のみが債務を引き受けて、他の相続人は債務を免れることは出来ません。これを許せば、例ですが、被相続人に多額の借金があった場合に資力のない相続人に借金を全部承継させて、その他の相続人が積極的な財産を承継することも可能であり、債権者にとっては大変な不利益となるのです。結局売主であるあなたと、他の相続人と長男との協議であなたが、代金の支払いを長男が引き受けるとしても良い、という合意や承諾をした場合に、はじめて他の相続人が支払債務を免れることになります。