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遺産分割後に死後認知された子が現れた場合について

~Question~

父の一周忌を終えて安心していた矢先、弁護士から亡父に対する認知の訴えが裁判で認められたという手紙が届きました。その手紙には、父の遺産の明細を教えてほしいという旨と、すでに処分された遺産があるか否かについて回答してほしいという旨の記載がありました。遺産分割はすべて完了しているのですが、このような場合は、認知が認められた相手方との間で遺産分割協議をやり直さなければならないのでしょうか?

 

~Answer~

 

●認知の訴え

認知とは、婚姻の届出をしていない男女の間で生まれた子について、親子関係の存在を認め、戸籍の届出をすることです(民法779条)。実の父親が、非嫡出子との親子関係を認めようとせず、認知の届出をしてくれない場合や認知の届出をする前に父親が死亡してしまった場合などは、「認知の訴え」を提起して裁判で親子関係を認めてもらうことになります(民法787条)。しかし死後認知の請求は死亡の日から3年以内にしなければならないので注意が必要です。

 

●認知の効果は訴求するのか

認知が認められると、非嫡出子は生まれたときから親子であったことが認められます(民時784条)。仮に、認知が認められる前に親が亡くなっていた場合には、相続人としての権利も当然認められることになります。

しかし、今回のご質問のように、父親の遺産についての分割協議が成立し、分割手続も完了している場合には、遺産分割のやり直しの請求をすることはできません(民法784条ただし書)。

認知された子は、他の共同相続人がすでにその分割または処分をしていた場合は、遺産総額に対する自分の相続分に応じた価額を計算して、価額による支払を請求することができるのみです(民法910条)。

このように対処することで、現実に遺産を取得している他の相続人の既得権と、認知された相続人が有する権利との調整を図っていくことになります。

 

●価額の支払請求をする場合

遺産分割協議を行った結果、遺産を取得した相続人は、それぞれ自分が取得した財産の価額に応じて支払をすることになります。そのためには、いつの時点で遺産を評価するのかという時期の問題について考えなくてはなりません。

相続が開始した時点と価額の支払を請求する時点とでは、時間的なずれが生じることにより株式や不動産の評価などに違いが出てしまうからです。

まず、共同相続人が遺産分割後すでに財産を処分してしまった場合でも、相続が開始したとき(父親が死亡したとき)に、なお現状のままであるものとみなして遺産を評価し、認知された子の相続分割合を計算します。そこで出た価格が、相続時と現時点とで著しく異なっていた場合は調整が必要です。

この点については、支払請求をしたときとするものと、現実に支払いをしたとき、あるいはその時期に最も近い時期とした裁判例があるようです。

したがって、必ずしもこの点は確定していませんが、請求を受けた時点での時価で、評価・算定するとよいでしょう。請求を受けた時点での遺産の総額を時価評価し、取得した財産の価額がこれに占める割合を出すと、支払うべき具体的な価額が決まるのです。

現行の法制度では、認知された子(非嫡出子)と正妻の子(嫡出子)とで相続分に差異を設けています。この法制度は違憲ではないかという問題がありますが、これについては下級審で違憲とされた例もあります(東京高決)。しかし最高裁判所では、違憲とまではいえないとされました。将来、法律が改正される可能性もありますが、改正前に発生した相続に関して現行のままとなるでしょう。

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