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相続人の一部が行方不明である場合の遺産分割協議【その2】
相続人の一部が行方不明である場合の遺産分割協議【その1】の続き・・・
●相続人の失踪
相続人の生死そのものが不明な場合もあります。その際は、「失踪宣告」の手続をとることとなります。失踪宣告の要件は、不在者の生死が7年以上明らかでない場合、法律上の利害関係人が家庭裁判所に請求することによって失踪宣告を得ることができます。その結果、民法30条・31条の規定により、当不在者は死亡したものとみなされます。通常の行方不明者は、7年の失踪期間満了時に死亡したものとみなされるため、その行方不明者についても相続が開始することになります。今回のご質問のように、99歳の祖父よりも先に死亡したのであれば、その代襲相続人に権利が移転することになります。もし代襲相続人に該当するものがいない場合には、単なる相続開始前の死亡者として扱われます。このようにして、7年以上も生死不明の状態である者が相続人の中に含まれている場合には、他の相続人は速やかに、家庭裁判所に対して失踪宣告の申立てをしなければなりません。不明者が、法律上死亡した者とみなされなければ、遺産分割協議を開始することができないためです。
なお、上記のような失踪宣告を普通失踪といいますが、特別失踪という失踪宣告も存在します。震災や戦争、遭難などの危難に遭遇し、生死不明のまま年月が過ぎた場合がこれに該当します。この場合には、危難が去ってから一年を経過したときに、配偶者や利害関係人が失踪宣告の申立てを行います。これによって法律上の死亡者とみなされた場合には、当該不在者は、危難が去った時点で死亡した者とみなされます(民法30条2項)。
●東日本大震災に対処するための特例法
平成23年3月11日の東日本大震災において、津波の影響で多くの行方不明者が発生しました。これらの者については、取調べを行った官庁が、戸籍法89条の規定に基づいて死亡報告行わなければなりません。そうでなければ、民法30条2項の「特別失踪(危難失踪)の規定により、危難が去ってから一年後に失踪宣告が行われるまで死亡が確定されません。
その結果、行方不明者の残された家族に対しては、死亡が確定するまでの一年間は相続が開始されず、遺族年金や行方不明者の財産等も宙に浮くこととなり、家族の生活が不安定なものになりかねません。
そこで、東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律が、国民年金、厚生年金、恩給・援護法(戦傷病者戦没者遺族等援護法・戦傷病者特別援護法)等において成立し、平成23年5月2日に公布・施行されるに至りました。当法律の成立により、東日本大震災による行方不明者については、地震の発生日に死亡したものと推定する旨が規定されました。
すなわち、東日本大震災により行方不明となった者については、遺族年金等の支給に関する適用にあたっては、地震の発生日に死亡したものと推定します。
① 3ヵ月間生死がわからない場合
② 3ヶ月以内に死亡が明らかとなり、かつその死亡の時期がわからない場合
民法30条2項の特別失踪(危難失踪)に関しては、前記と同様に扱われています。