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被相続人と特別な縁故にあった者の権利
~Question~
私は20年ほど前に夫が死んだあと、夫の父とくらしてきました。義父は5年ほど前に脳卒中で倒れて寝たきり状態となり、以来私が看護を続けてきましたが、そのかいもなく先日なくなりました。義父には相続人がおりません。私は義父の財産について何か権利はないのでしょうか?
~Answer~
●特別縁故者
法律上被相続人との関係で子供の配偶者に当たる者は、被相続人と養子縁組をしていない限り相続権はありません。「相続人不存在」の場合は原則として相続財産は国庫に帰属することになりますが、被相続人の意思を推測すると、国庫に帰属させるよりは相続人ではないものの、内縁の妻や最後まで献身的に被相続人の世話をした者など一定のものに相続財産を取得させることを望むであろうと考えられる場合があります。こうした場合に遺言制度があまり活用されていない我が国の実情をふまえて、設けられているのが特別縁故者に対する相続財産分与の制度です。
●特別縁故者の意義と範囲
民法によりますと、特別縁故者にあたるものとして次ようなものがあげられます。
①「被相続人と生計を同じくしていた者」
例えば被相続人と一緒に暮らしていた内縁の妻、事実上の養子、事実上の養親、子の嫁などで生計が同じであれば他人でもまったくかまいません。
②「被相続人の療養看護に務めた者」
生活を一緒にしていなくても被相続人の療養看護に特に尽力を尽くした親族・隣人・知人などがいればこれに該当します。なお、付添看護婦や家政婦などについては、仮に報酬を受けていたとしても、それ以上に特別の献身的な努力をしていれば財産の分与を受けることもあります。
③「その他被相続人と特別の縁故があった者」
被相続人が遺言をしたとすれば遺贈のの配慮をしたであろうと思われる程度に (①②に準ずる程度に)、被相続人との間に具体的・現実的な精神的・物質的交渉があった者をさします。なお、特別縁故者は自然人に限られるものではなく、法人でもよいとされています。例えば、公益法人・社会福祉法人・養老院などがこれに当たるとされれています。お尋ねの場合は、あなたは①に当たりますので、他に相続人がいなのですから、特別縁故者に対する財産分与の請求申立てを家庭裁判所に行うべきです。なお、特別縁故者に対する財産分与を受けることができるのは、申し立てをした者に限りますので注意ください。
●分与の具体的手続き
特別縁故者に対する相続財産分与は「相続人不存在」の場合の手続きの中で行われます。特別縁故者は、家庭裁判所における相続人捜索の公告期間が満了しても相続人が現れない場合に、広告期間満了後3か月以内に、被相続人との間の特別の縁故を明らかにした申立書を家庭裁判所のに提出して、相続財産分与の請求をします。申立書の記載は、家庭裁判所が特別の縁故関係の内容を調査する手がかりとなります。そして、家庭裁判所は相続財産管理人の意見を聞き、申立人と被相続人との具体的関係、その期間、具体的状況、申立人の年齢・職業、相続財産の内容や状況を判断した上で分与をするか否か、分与の額を決定します。お尋ねの場合、あなたは義父と20年も一緒に生活をし、しかも5年間寝たきり状態であるのに看病していたのですから大変関係が深い場合と考えられますので、相続人捜索の公告期間満了の3か月以内に家庭裁判所に相続財産分与の申立てをしておけば、義父の相続財産の内相当額を取得することになると思われます。なお、分与は遺言制度を補完するものですから、相続税法上は、あなたは遺贈を受けた場合に準じて税金を支払うことになります。