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分割前に勝手に処分された遺産を取り戻せるの?
~Question~
先日、父が亡くなりました。相続人は母、長男の兄、次男の私の3人です。ところが、長男は遺産分割の話合いができていない状態で、私たちに無断で遺産である不動産を処分して移転登記をし、また父が趣味で集めていた高価な骨董品を処分をし、預金も勝手におろしてしまいまいした。長男が勝手に処分した遺産を、私たちは取り戻せるでしょうか。
~Answer~
被相続人が亡くなってから遺産分割が完了するまでの間、遺産は共同相続人全員の共有に属すると考えられています。特に不動産や動産については共同相続人の共有に属しますので、1人の相続人が勝手に処分することはできません。預金などの債権については、相続開始と同時に共同相続人の相続分に応じて当然に分割されますが、実際の銀行実務では預金者が亡くなることがわかると、相続人全員の同意がないと預金の払い戻しをすることはできません。以下で財産ごとにご説明致します。
●不動産について
まず、不動産は共同相続人の共有に属しますので、相続人の1人が勝手に譲渡することはできません。
今回のご質問の場合、長男は自分の法定相続分の4分の1以外の4分の3の持分については、まったくの無権利者です。したがって、たとえ譲渡を受けた第三者が登記を信頼して移転登記を受けたとしても保護されません。すなわち、他の相続人は4分の3の持分については登記の抹消を請求することができます。
●動産について
次に、動産も共同相続人の共有に属しますので、相続人の1人が勝手に処分することは許されません。しかし、動産は不動産とは違い、たとえ無権利者からの譲渡であっても、動産を譲りうけた者が所有権を善意無過失に信じて譲渡を受ければ所有権を取得します。これを「善意取得」あるいは「即時取得」の制度といいます。今回のご質問の場合、長男からの骨董品を譲り受けた第三者が長男の所有物であると過失なく信じたときは、その者が所有権を取得し、その返還を求めることができなくなります。
●預金について
そして、預金の場合については、長男は父が亡くなったことを知らせずに銀行から、預金の払い戻しを受けたものと思われます。銀行が預金者の死亡
を知らずに預金通帳と届出印の所持人に払い戻しをしたことについて過失がないときは、「債権の準占有者に対する弁済」として払い戻しが有効となる場合があります。この場合、長男に対し払い戻しを受けた金額について、相続分相当額の返還を請求することになります。