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保証人の死亡により、その相続人は保証債務を相続するの?【2】
【1】の続き・・・
●身元保証人の場合
身元保証とは、雇用契約上の被用者の債務不履行や不法行為によって生じる損害賠償債務を保証する、いわゆる将来の債務の保証です。
今回のご質問の場合、身元保証人である父親は、友人が債務不履行や不法行為によって会社に損害を与えた場合には、友人に代わってその損害を会社に対して弁済すべき義務を負っていたことになります。
では、身元保証人が死亡した場合に、身元保証債務は相続人に承継されるのでしょうか?
この点について、大審院判例(昭和2年7月4日)は、身元保証債務は通常の保証債務とは異なり、保証人の責任の及ぶ範囲が広範であり、被用者と保証人の間の信頼関係を基礎とするものであり、専属的性質を有し、特別の事情がない限り身元保証人の死亡によって消滅するため、相続人によって承継されないとしました。
その後、身元保証人を保護することを目的とし、昭和8年に身元保証ニ関スル法律(身元保証法)が制定され、
①身元保証の存続期間の制限(上限は5年、期間を定めない場合は原則として3年)
②保証人に危険が及ぶ一定の場合における使用者の保証人への通知義務
③身元保証人の解約権
④保証責任の限度を定めるについての裁判所の広い裁量権が認められる
など、身元保証人の責任に一定の制限が付されました。しかし相続性についての規定は置かれませんでした。その後の大審院判例(昭和18年9月10日)においても、身元保証法施行の前後を問わず、身元保証債務は特別の事情がない限り、相続されないと判断され、今日でもそのように考えられています。
したがってご質問の場合、特別の事情がない限りは、相続人である子は父親の身元保証債務を相続せず、会社に対して責任を負わなくてよいことになります。
ただし、友人が会社に損害を与えた後に父親が死亡した場合には、すでに具体的な損害賠償債務が発生しているため、通常の保証と同じように相続されることとなります。
【3】に続く・・・