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老人性認知症で被相続人となりうる者の浪費に対する対処法【前編】
~Question~
私の父は最近、やたらと高価な骨董品を買い集めてきたり、スーツを何着も注文するなど、同じ品物をいくつも買ってきたりします。馴染みの店の場合であれば返品を頼むことができますが、行きつけでないお店で買い物をしてくることも多々あり、父はどこで買ったかさえも思い出せません。本当に欲しかったものであるかさえも、はっきりしないことが多いです。父の老後を支えるための大切な蓄えの浪費を防ぐには、どうしたらよいでしょうか?
~Answer~
新しい成年後見制度
急速な高齢社会を迎えた昨今、判断力の衰えた高齢者を保護する必要性と、個人の尊厳や意思の尊重といった自己実現の重視から、民法はこれまでの禁治産・準禁治産の制度を変更し、平成12年4月1日より施行された新しい後見制度を定めました。これを未成年者の後見制度と対比し、成年後見制度といいます。
後見
常に正常な判断能力を欠く場合には、家庭裁判所の後見開始の審判によって成年被後見人となります(民法7条)。成年後見人が選任され、成年被後見人に代わって財産に関するすべての法律行為をします(民法8条)。成年被後見人のした法律行為は、取り消すことができます(民法9条)。
しかし、日用品の購入など日常生活に関する行為は取消の対象とはなりません(民法9条ただし書)。
保佐
常に判断能力を欠くとまではいかないが、判断能力が著しく不十分な人の場合、家庭裁判所の保佐開始の審判によって被保佐人として保佐人が付けられます。なお、以前の準禁治産制度とは異なって、単なる浪費者というだけでは保佐開始の審判はなされません。浪費者の中でも判断能力が著しく不十分な人だけが保佐の対象となります。判断能力が著しく不十分とまではいえない場合は、補助の対象となります。被保佐人が民法13条に定められた重要な行為をする際には、保佐人の同意を得なければなりません。同意を得ないでした被保佐人の行為は取り消すことができます(民法13条1項・4項)。
また、民法13条に定める以外の行為についても、家庭裁判所の審判により、保佐人の同意が必要であると決めることができます。その場合には、これらの行為を保佐人の同意なしで行ったときには取り消すことができます(民法13条2項・4項)。
いずれの場合にも、日用品の購入など日常生活に関する行為は、保佐人の同意がなくとも行うことができ、取消の対象とはなりません(民法13条1項ただし書・2項ただし書)。
さらに、当事者が申立てにより選択した、特定の法律行為について、保佐人が被保佐人に代わってすることを家庭裁判所の審判で決定することもできます。保佐人が被保佐人に代わってする法律行為を定める審判は、本人が申し立てた場合以外は本人の同意が必要です。