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法律上の形式に反する遺言の効力について
遺言書は必ず遺言者の意思によらなければならない
ビデオやテープレコーダーを使っての遺言・・・本人が登場してきて遺言の内容を述べているビデオ等は、遺言として認められてもよさそうですが、遺言作成の要件の1つである、本人の署名押印という点にはあてはまりませんので、ビデオやテープレコーダーでの遺言は、法的な効力をもつ遺言にはなりません。
ただ、例えば、本人の自発的な意思による遺言であることがわかるように、病床での遺言の作成の模様をビデオ撮影するということであれば、後日のトラブルを予防する効果があるしょう。
また、ビデオやテープレコーダーで記録させておけば、第三者に遺言書が破棄されてしまったとしても、遺言書が存在したことや、内容についての証拠になることもあります。
障害がある人がする遺言について・・・公正証書遺言は、従来、遺言者から公証人への口述、公証人による読み聞かせが厳格に要求されていたため、障害のある方にとっては非常に不便な制度でした。そこで、平成11年の民法改正により、遺言者の聴覚・言語機能に障害がある場合には、手話通訳か筆談で公証人に伝えること、公証人による内容の確認は手話通訳かもしくは閲覧の方法ですることが認められるようになりました。
また、点字機による自筆証書遺言は認められませんが、秘密証書遺言の場合は、点字機によることもできます。ただし、民法に定める方式に従う必要がありますので、署名だけはできなければなりません。全盲の遺言者であっても、普通の文字で自筆証書遺言を書くことができれば有効です。
共同遺言は認められるのか・・・共同遺言とは、2人以上で1つの遺言書によって遺言をすることを指します。民法では共同遺言を禁止しています(民法975条)。
たとえば、夫婦がお互いの自由意思に基づいて2人で1つの遺言書で遺言をしても認められません。
そもそも遺言というのは私的なものであり、本人の真意が大切だからです。ましてや夫婦でない者同士が共同遺言をするのは、弊害が大きいでしょう。
財産をどのように処分するのかについて、夫婦で相談して決めるのは自由です。しかし遺言書は別々に書く必要があります。別々に書くのであれば同じ日に作成しても問題ありません。
判例では、夫婦が共同の名義で作成した遺言書で、妻がその作成に一切関与しておらず、その内容についても妻の財産には全く触れていないものについて、夫だけの遺言とみなされたケースがあります。
ただし、どの程度の内容なら単独の遺言とされるかは明確ではありません。
遺言書を無理に書かせた場合・・・遺言は遺言者の真意によるものでなければなりません。もし真意でなかった場合、たとえば強迫や詐欺などにより書かれた遺言は無効です。
また、無理に書かせた者が相続人や受遺者であれば、遺言が無効になるだけでなく、書かせた者は相続の欠格となり、相続や受遺の権利自体を失うこととなります。
遺言者が気を失っていたり、病気などのために判断能力や手を動かす能力がないにもかかわらず、手を取って無理に書かせた遺言は本人が書いたとはいえないので無効です。書かせた者は、遺言の偽造者として、相続欠格になります。ただ、現実的には、無理に書かされたということの立証は非常に困難です。
口頭による遺言の効力・・・遺言が有効に成立するために、民法で定められた方式に従って作成する必要があります。
単に口頭で述べられただけのものは、有効な遺言ではありません。
ただ、口頭で述べて成立する遺言も存在します。まず、公正証書遺言の場合では、本人が署名できないときは、公証人がその旨を付記することで有効に成立します。
また、危急時遺言などの特別方式による遺言では、口述によるものも存在しますし、署名押印ができない場合の特別規定も存在します。その方式に従って作成されているならば、その遺言は有効です。ただし、この場合であっても証人や立会人の自署押印は必要になります。