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相続財産管理について
[Question]
私は、Aさんに土地を貸し、Aさんがその土地の上に建物を所有していましたが、最近そのAさんが亡くなりました。
ところが、Aさんには身寄りもなく相続人がいるかいないか分かりません。このままでは私としても困りますし、この際、土地を返してほしいと考えていますが、何か良い方法はないでしょうか。
[Answer]
財産の帰属・・・建物と借地権は、相続の対象となるので、Aさんに相続人があれば、その相続人が相続しますし、相続人がいることが明らかでないときは、その財産について、精算あるいは特別縁故者への分与などが行われ、さらに残った財産は国庫に帰属することになります。
精算とは、Aさんに対する債権者がいる場合に、Aさんの財産からその支払いをすることと、Aさんから遺贈を受けた者がいる場合に、その遺贈の履行をすることを言います。
また、特別縁故者への分与とは、相続人ではないが、被相続人と特別の縁故があった者からの申立てがあった場合、相当と認められれば、家庭裁判所がその者に対して、Aさんの財産の全部または一部を与えることを言います。これは、遺言が十分活用されていない現状において、これを補って故人の遺志を実現するための制度であるといわれています。
特別縁故者とは、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者」と規定されています。例えば、内縁の妻などはこの典型でしょう。現実には、具体的な事情に基づいて判断されます。
手続の流れ・・・Aさんの財産の帰属は、このようにして決められますが、現実の管理処分は、次の手続きでなされます。
まず、相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求により相続財産管理人を選任します。
利害関係人とは、受遺者や債権者のほか、財産の帰属について法律上の利害関係を持つ者も含まれてます。あなたの場合も、地主として、建物及び借地権の帰属については利害関係を持っていますから、利害関係に該当します。あるいは、滞納地代があれば、相続債権者にも該当します。そして、選任された相続財産管理人は、財産目録をつくり、事務終了まで家庭裁判所の監督のもとで財産を適切に管理する業務を負います。
相続財産管理人は、選任された旨の公告がなされた後、2ヶ月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、2ヶ月以上の期間を定めて、相続債権者と受遺者に対して請求をするように官報あるいは新聞に公告します。そして、その期間が満了した後においてもなお、相続人がいることが明らかでないときは、家庭裁判所は、さらに6ヶ月以上の期間を定めて相続人がいるなら、その権利を主張するべき旨の公告をします。
この期間が満了するまでに、申出をしなかった相続人は、その後はもはや相続人としての権利を行使できなくなります。その場合には、精算をして残った財産について、特別縁故者への分与が行われ、さらに残った財産は国庫に帰属します。
土地の返還を受けられるか・・・このような手続きに従ってAさんの建物と借地権も帰属が決まることになるのですが、ではAさんの相続人がおらず、また、精算もされない場合には、建物と借地権は国庫に帰属し、国に対して土地を貸さなくてはならないのでしょうか。
しかし、国としても、借地権を相続して土地を借りる必要はないと考えますし、相続財産を金銭に換えても問題はないと考えられます。そこで、あなたのほうから、相続財産管理人に対して、借地権付建物をあなたに譲渡して欲しいという申出をすることができます。この場合、裁判所の許可が必要で、代金についても裁判所が相当か否かを判断します。その場合、仮に借地権が国庫帰属となっても、国としても必要のない土地を地代を支払ってまで借りる実益はなく、借地権確保の必要性に乏しいと思われ、そのような意味で、借地権自体の価値を低く評価して、かなり安い金額で譲渡を許可してもらえるものと思われます。
なお、それまでの建物の管理は相続財産管理人の責任で行い、また、地代の支払いも、相続財産の中に現金などがあればそこから支払われます。