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血の繋がりのない戸籍上のみの実子に、相続権はあるか【前編】

~Question~

私たち夫婦は、結婚以来ずっと子供ができませんでした。そこで双子の男の子を生んだ私の妹に頼み込んで、そのうちの一人をもらい受けて私たち夫婦の実子として出生届を出すことにしました。そして最近、夫が亡くなりました。夫の両親はずっと昔に亡くなっており、健在なのは夫の弟だけです。

夫の弟は、「その子は君たちの本当の子ではないから、相続権はないだろう。だから自分に相続権があるはずだから、兄の遺産をよこせ」と言ってきました。

私はぜひとも、この子に相続させたいと考えています。本当に、この子には相続権がないのでしょうか?

 

~Answer~

 

●虚偽の出生届と親子関係

被相続人の子供には、相続権があります。

しかし、ここでいう子供とは、法律上親子関係が認められるものに限られています。

他人の子供を自分の子供として出生届を出したとしても、真実の血縁関係があるわけではないので実親子関係が発生せず、出生届は無効になります。戸籍の記載は絶対的なものではなく、事実と違っている場合には事実が優先されるからです。

 

●無効な出生届を養子縁組届と見ることはできるのか

他人の子供を自分の子供として出生届を出すという行為が無効であったとしても、養子縁組届としての効力が認められることになるのかが問題となります。このように、ある法律行為が無効であっても、別の法律行為としての条件を満たす場合には、その別の行為としての効力を認めることを法律行為の転換といいます。しかし、仮に出生届を出す際に、養子縁組の意思をもって出したつもりでも、養子縁組の届出はその方式が法律上厳格に定められているため、裁判所はこれを認めていません。

したがって、そのお子さんが長年にわたって亡くなったご主人やあなたと事実上生活をともにしていたとしても、その出生届は、出生届としても養子縁組届としても効力を有しません。法律上の親子関係が生じないため、ご主人の弟さんが言うように、そのお子さんには相続権がありません。ご主人の遺産については妻が3/4を、ご主人の弟さんが1/4をそれぞれ相続することとなります。

 

【後編】に続く・・・

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