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遺産分割におけるトラブルの原因について
~Question~
遺産分割をめぐり様々なトラブルが起きていると聞きますが、その原因としてはどのような事情が考えられますか。
~Answer~
トラブルには、いくつかの共通した特徴があります。親子や兄弟姉妹という相続人が、亡くなられた家族の遺産をめぐって、いわば骨肉の争いを繰り広げ、その争いは長期化または複雑化し、当事者間の感情的対立は極めて厳しいものであり、とても正常な人間関係を築くことはできないことです。
●相続に対する権利意識の高さ
我が国においては、持家に対する執着が依然強く、「自分で家を建ててはじめて一人前」とみられる風潮があるのに対して土地には限りがあり、特に大都市圏においては土地の価格が高騰し、普通に働いている人がとてもではないが家を持てないという状況があげられます。そこで、家を持ちたいのに自分では持てないため、親などの財産を当てにしてその遺産が入ってきたら家を建てようと考え、相続に対して過度の期待を抱く人がいるのが現状です。
また、家長意識が薄れ、長男が家を継ぐかわりに親の財産を独占するのではなく、法定相続分どおりに分けようという傾向が強くなっていることがあげられます。すなわち長男以外の兄弟姉妹にしてみれば、せっかく権利があるのに相続を放棄するのはバカらしいということです。
そして、兄弟姉妹ではそれほど強い対立がない場合でま、その各々の配偶者が冷めた目で遺産分割を見、ある意味ではトラブルを大きくしていることもあるとの指摘もあります。
●高齢化社会の影響
平均寿命が延び、親子といっても同居をしないで世帯を構えることが多くなっている現在では、親としても配偶者が死んだからといって、昔のように自分の相続分も子どもに分けてしまうのではなく、自分の余生のために貯めておいたり、自分の面倒をみさせるための取引の種に使ったりと自分の法定相続分に固執するケースが増えています。
一方親子が同居して生活をし、長年親の面倒を見てきた者がいるような場合、家をすでに出てしまい親の世話などまったくしていなかった兄弟姉妹が親の財産について自分とまったく同じ権利を主張してくるのは、「自分はこんなに苦労したのに」と納得のいかない思いを抱くことが多いと思われます。
男兄弟にしてみれば、他家へ嫁に行った姉や妹にも遺産を分けるといのは、せっかく親が築いた財産を他人の家のために使うことになるとして抵抗があったりします。
さらに高齢化が進んでくると、亡くなる本人のみならず残された相続人自身も高齢の人が多くなり、時として遺産分割についての判断能力が低下し、そのために遺産分割協議が実質上極めてむずかしい場合もあります。
●感情的な対立のズレから勘定的な対立のズレ
以上で見たような事情から、相続人間で相続に対する意識や思惑は、すべて自らに都合のよいものとなり大幅なズレを生じてしまっています。
そして、兄弟姉妹や親子といっても、もともと仲があまり良くないという場合もあり、相続をきっかけに感情的な対立が決定的となり、修復が不可能となることもあるのです。特に、相続をめぐり直接には関係のない相続人の配偶者などが相続人を焚き付け、できるだけ有利な遺産分割をしようと介在してきたような場合には、この傾向が顕著に見られるのです。
その結果として「相続を放棄せよ」などと他の相続人に圧力をかけたり、分割方法、相続税の支払いから計数上の細かい点にいたるまで、本来とても争いにならない些細な点を含め、様々な争いを生じ、長期化、泥沼化してとても自分では解決できないようなこととなってしまうのです。
●遺言の不活用
こうした遺産分割をめぐる争いは、死者が生前に各相続人の立場に配慮して遺言をしておけば感情面でも、勘定面についてもある程度防止できるはずです。しかし、わが国では遺言はあまり一般的にはなされていないため、トラブルが起こっているといえます。