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遺留分を放棄するための必要な手続き
~Question~
妻はすでに亡く、家業を継いだ長男に全財産を相続させたいと考えています。他の子供たちは、すでにある程度の財産を与えてあるので、これ以上財産はいらないと言ってはいるのですが、私が死ぬと気が変わらないとは限りません。何か良い方法はないでしょうか。
~Answer~
●生前の相続放棄
我が国の民法は、被相続人の生前に相続放棄をすることは認めていません。すなわち、相続放棄は被相続人が死亡し、相続が開始した後でなければ出来ません。したがって、長男以外の子供たちに、「遺産は一切相続しません。相続を放棄します」と言う文章(念書)を書かせても効果はありません。
そこで、あなたとしては、まず、長男に全財産を相続させる旨の遺言をすることが考えられます。しかし、長男以外の子供たちには、遺言をもっても奪うことのできない相続分(遺留分)が法律によって保障されています。したがって、長男以外の子供たちにそれぞれ既に与えた財産が遺留分に達していれば別ですが、そうでなければ長男は、長男以外の子供たちから遺留分減殺請求権の行使を受ける危険性があります。
ただ民法は、被相続人の生前に家庭裁判所の許可を得て遺留分の放棄をすることを認めています。したがってご質問の場合は、長男に全財産を相続させる旨の遺言をするとともに、他の子供たちについては、気が変わらないうちに遺留分を放棄してもらい、家庭裁判所で遺留分放棄の許可を得ておけば良いわけです。
●遺留分放棄の手続
遺留分放棄の許可の審判は、第一順位の推定相続人、ご質問の場合で言えば、長男以外の子供たちが家庭裁判所に申し立てることによってなされます。
しかし、この許可が必要なのは、当事者の自由に委ねると、被相続人等が遺留分を持つ相続人に圧力を加えて遺留分を放棄させ、不当な結果になる恐れが否めないため、家庭裁判所のチェックを経ることによってそれを防止することになります。家庭裁判所は遺留分放棄の申立てが制度の意義を理解した上で真意に基づくものか、放棄の理由の合理性、必要性、放棄と引き換えに何らかの代償があるのかなどについて審査することになります。よって、申し立てさえすれば当然に許可が出ると言うわけではありません。
要するに、長男以外の子供たちに遺留分を放棄してもらうためには、話合によるコンセンサスと相当の代償が必要なのです。