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署名と押印についての注意点
自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合には署名押印がないと遺言が無効になります。
●署名をする
署名は自筆で氏名を書きますが、通称でもかまいません。民法では「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と規定されています。氏名とは戸籍上の姓名のことですが、本人だと判断ができるのであれば名前だけの記載でもかまいません。さらに、遺言者との同一性が示せるなら署名が雅号、芸名、屋号、ペンネームなどであっても有効です。
ただし、姓だけの署名については、相続人が家族や親戚であることを考えると、避けたほうがよいでしょう。
●遺言書に押す印鑑は?
自筆証書遺言と秘密証書遺言の遺言書の押印は、実印を使用しなければならないという制限はありませんし、拇印でもよいと考えられています。しかし、被相続人本人のものかどうかの判読が難しいために、トラブルになりやすいので実印を押しておくべきでしょう。
遺言者の死後、遺言書に押印がないことをしり、相続人などが印鑑を押印すると、遺言書を偽造・変造したとみなされます。さらに、印鑑を押した人は相続欠格者になる可能性もあります。遺言書の作成後には、きちんと押印したか確認するべきです。
●遺言書に署名押印がないとき
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、遺言者本人の署名と押印が必要です。すなわち署名押印がなければ無効です。署名押印の場所は問いませんが、押印は署名に続けてしなければなりません。ただ、判例には署名押印が遺言書自体になく封書にある場合、遺言書と一体の部分に署名押印があったとして、遺言を有効としたものがあります。しかし、封印のある遺言は家庭裁判所において相続人が代理人の立会いで開封しなければならず、これに違反すると封筒が遺言書である証拠がなくなります。
秘密証書遺言では、証書への押印のほか、封印もしなければなりません。
●署名だけで押印されていなかった場合は?
署名があって押印がないということは、公正証書遺言については考えられません。しかし、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合には押印を忘れるといった場合もありえます。これらの遺言の場合、押印は必要不可欠ですので、原則として押印のない遺言についてはすべて無効になってしまいます。
なお、押印の種類にはその使用する印鑑によって、実印、認印などがありますが、法律的には使用する印鑑についてとくに指定はありません。しかし、遺言者の意思を正しく伝えるためにも、遺言書に使用する印鑑は、実印を使うようにするべきです。また、サインのような手書きのものはまったく認められません。