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遺言がある場合にも遺産分割協議って必要?【2】
【1】の続き
●遺言書の指定がある相続の割合のみである場合
遺言書の内容によって、単に相続する割合(相続分)のみを指示し、具体的に誰がどれをとるかなどは、相続人間の話合いに委ねている場合もあります。このような場合は、遺言があっても遺産分割協議を行わなければ、現実に具体的な相続を行うことができません。したがって、遺言の趣旨に反しない範囲において、具体的相続分を決めるための遺産分割協議を行うことが必要ということになります。特に不動産では、分割や分筆登記がやりにくいものが遺産の中に含まれている場合は、長男が1/2だけでなく、当該不動産を全てひとりで相続することにして、その1/2に相当する価格の弁償を他の三姉妹にするなど、遺言の趣旨に従いながら具体的な方法を話合いで決めていくのが一般的です。また、不動産は移転登記を経なければ第三者に対抗することができず、完全な権利者になることができません。したがって相続登記をする必要がありますが、遺言書のみでは登記が不可能な場合があるため、その際には遺産分割協議書も作成しなければなりません。
●遺言に反した遺産分割は不可能?
さて、今回のご質問の場合において、遺言書には長男が1/2とされています。しかし分割協議の中で他の姉妹にも配慮し、「長男も法定相続分の1/4を取得することにし、残りの1/4を他の姉妹に譲渡する」という内容の分割協議を行うことは、絶対に許されないのでしょうか?そのような場合は、いったん長男が1/2を相続したうえで、他の姉妹に1/4を贈与することになるのでしょうか?・・・
遺言者の最終的な意思表示である「遺言」の法的趣旨を貫くのであれば、遺言書の内容をいったん実行し、あとは相続して自分の財産となったものを任意に処分せよということになりますが、このような手続しかできないとすれば、贈与税の問題が発生するばかりか登記費用などの余分な費用までもかかってしまうでしょう。
このような場合には、相続人全員の同意が得られるのであれば、遺言書と異なる内容の分割協議が成立しても直ちに無効とはなりません。長男がはじめから1/4だけを相続し、残る1/4を他の3姉妹が相続したとする分割協議書も、相続人全員の真意に基づくものであれば有効にすることが可能です。不動産の所有権移転登記も、分割協議書に基づいて単純に「相続」を登記原因として処理することができます。したがって、たとえ遺言があっても、相続人全員(遺贈のあるときは受遺者を含む)の同意があれば、一定範囲で遺言とは異なる内容の、遺産分割協議を行うことは可能であり、最初に述べた「遺言優先の原則」も、この場合には修正されることになります。