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賃借権の相続と解除につて

借家人Aさんが1年前に急死しました。以後、妻Bさんが借家に1人で住んでいますが、賃料不払いが続いています。そこで、Bさんに賃料催告と契約解除の通知を出しました。Aさん、Bさんには2人の子供(Cさん、Dさん)がいて別に住んでいます。このBさんのみに対する解除は有効でしょうか。また、Cさん、Dさんに延滞賃料の請求はできませんか。

 

相続人の賃料支払義務・・・賃借権も財産ですから、賃借人が死亡した場合は相続の対象になります。本問ではAさんの相続人であるBさん、Cさん、Dさんが共同相続して共同賃借人となるのです。したがって、あなたはこの3人に賃料の支払いを請求できます。その額ですが、判例によりますと、共同相続人はそれぞれが借家を不可分的に相続していることになるため、その対価として賃料債務も不可分債務になります。本問の場合、賃借家屋には、Bさんしか居住していませんが、それは共同賃借人であるBさん、Cさん、Dさん間の内部事情にすぎないのでBさん、Cさん、Dさんの全員が居住している場合と同様に、全員に対してそれぞれ賃料の全額を請求できます。ただ、相続開始前に生じた賃料の未払い分については、すでに独立した金銭債務として分割債務になり、本問ではBさんが2分の1、Cさん、Dさんが4分の1ずつ分割して払うことになります。

 

解除の不可分性・・・次にBさんだけに催告、解除の通知をすることが許されるかという問題です。相手方が複数である契約の解除は全員に対してしなければ効力がありません(民法544条1項)。解除不可分の原則といいます。これは、個人ごとに解除したりしなかったりすると法律関係が複数になるからです。催告についてはこのような規定はありませんが、催告は解除の前提であることから、同様に考えられています。したがって、あなたの場合、Bさん、Cさん、Dさん3人に対して催告、解除の通知をする必要があります。もっとも、全員に対してするといっても同時にする必要はなく、あなたがこれからCさん、Dさんに対して催告と解除の通知をすれば、その時から解除の効力が生じることになります。

ただ、賃貸人には賃借人の相続人が何人いてどこに住んでいるかなど分からないことが普通ですから、全員に対する催告と解除の通知を要求するのは賃貸人に少し酷のようですが、今日における賃借権の重要性と賃借人保護の要請から、遠方に住んでいる相続人にも賃料を支払って解除を阻止する機会を与えようとするこの制度の趣旨からすればやむをえないと考えられます。

 

特段の事情・・・もっとも、判例は相続人一人に対する催告と解除の通知をつねに無効としているわけではなく、「特段の事情」があれば有効としています。たとえば、共同相続人の一人が他の者から催告および解除の通知の受領代理権や賃借権自体の管理権を与えられている場合がこれにあたります。

判例にも共同相続人が同居している場合に、その生計主宰者(世帯主など)のみ対する解除を有効としてものがあります。この場合は、他の共同相続人がその生計主宰者に代理権を与えていたと認定したのです。賃借人に対して、賃貸人から解除を阻止する機会を与えるという趣旨からすれば、このような場合には一人に対する催告および解除を有効としてもさほど不都合はないと考えたのでしょう。

 

本問での解除・・・あなたがAさん死亡後、BさんやCさん、Dさんと延滞賃料のことについて話し合いをしたりして、Cさん、Dさんから今後はBさんに任せるからBさんと話してほしいと言われた場合には、Bさんに催告及び解除の通知の受領代理権が与えられたと考えられています。

このような事情がないときでも、CさんDさんも家庭を持ち地所に自宅があるなど居住の本拠が確立していて、母親であるBさんと経済的にも相互に独立し、Bさんが居住している本件借家に居住したり権利主張したりする意思があるとは考えられないような場合には、Cさん、DさんからBさんに賃借権自体の管理や前記の代理権が暗黙裡に与えられていたと認められる余地はあるでしょう。さらに進んで、このような場合には、居住相続人であるBさんのみが賃借権を相続するという黙示の遺産分割があったと認定することは不可能ではないかもしれません。しかし、このような認定は微妙ですから、あなたとしては、面倒でも全員に対して、催告解除の意思表示をするのが無難です。

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